
今回、レストランを始める上で最初に考えたことは、
「さて、セザール・リッツならここで何をするだろう?」と真冬の由布岳の
麓、建設現場に立って、一人想像を働かせました。
セザール・リッツ。20世紀初頭、パリのホテル・リッツ、ロンドンのカールトン・ホテルを
生み出した、サービス業界の革命的な人物。1990年頃、世界的にCS(顧客満足)、
その後パソコンが普及するとone to one といた個人対応のサービスの必要性が
急激が高まりましたが、セザール・リッツはこのようなことを100年以上前の
19世紀末、すでにマニュアル化し、実践した、まるで未来からやってきたような人物
なのです。
彼が生み出したアイデアやスタイルは幾多に及び、その多くは今や「常識」
あるいは最新のビジネス・モデルとして、私たちの生活の隅々に浸透してます。
しかし、それを生み出したのは、19世紀、場末の売春宿で店番をしていた
労働者階級の貧しい青年・セザール・リッツであることを私は「忘れるな」と、
自分に言い聞かせます。どんな人も侮ってはいけない、そして今もどこかで
21世紀のセザール・リッツが、冴えない格好で懸命に闘っている、そして
やがて、世界を変える、という2つの意味で。
今、彼の意志はアメリカ資本のザ・リッツ・カールトンとして、世界にその名を
轟かせています。しかし私は、出来る事なら20世紀初頭のホテル・リッツに、
セザール・リッツが仕切る夢のホテルに泊まってみたいという願望があります。
永遠に叶わぬことですが・・・。
私はホテル業界の出身でも、ホテル・ラバーでもありませんが、この世界には
夢のある人物が多く、自然と惹かれます。
かつて、セザール青年は自分のホテルを夢見た。それを彼は「ホテル・リッツ」として、
かたちにしました。私も自分の店を、彼のような才知も華やかさも無いのですが、10年、
いや20年かかろうが自身の理想に仕立てたいのです。多くの困難を乗り越えて。